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注目の論文

La系ペロブスカイト型酸化物の電子伝導性

-酸化物エレクトロニクスに適合する、新しい電極材料を開発

2015.03.12掲載REVIEW ARTICLEPublished : 2015.03.10 / DOI : 10.1088/1468-6996/16/2/026001

図1.Crystal structure of LaCo0.5Ni0.5O3 based on a rhombhedral lattice. (Sci. Technol. Adv. Mater. Vol. 16 (2015) p. 026001に掲載論文Fig.12を元に描画したもの)

セラミック製品の多くは,機能部材である酸化物と金属電極の2つの材料から形成されている.酸化物と金属とでは,物理的化学的性質が大きく異なるため,品質が安定化して製造されるように,工業的には両者の差を緩和することが要求される.しかし,両者の差を緩和するとこで,酸化物が持つ本来の優れた特性が犠牲になることも少なくない.このため,セラミックス製品中の金属を導電性酸化物で代替することができれば,機能部の酸化物に本来の特性を発揮させて,新たなセラミックス製品の創出に繋がると期待される.

Science and Technology of Advanced Materialsに発表された小塚久司、大林和重(日本特殊陶業)と河本邦仁(名古屋大学)らによる本レビュー論文Electronic conduction in La-based perovskite-type oxidesは,電子伝導の視点から,La系ペロブスカイト型酸化物の伝導機構を解析すると共に,実使用条件での評価を行うことで,セラミックス製品に用いられる金属電極及び配線を代替可能な導電性酸化物材料として, LaCo0.5Ni0.5O3が適することを論じた.

La系ペロブスカイト型酸化物については,多様な分野において多彩な研究がなされてきたが,金属電極及び配線の代替材料としては着目されてこなかった,これに対し,本レビュー論文は,一連のLa系ペロブスカイト型酸化物について,結晶構造と電子構造を解析することで伝導機構を明らかにし,金属電極及び配線の代替材料としての可能性を論じた点が注目に値する.中でもLaCo0.5Ni0.5O3は,図に示すような菱面体晶のペロブスカイト型構造であり,室温導電率がσ;= 1900 S/cmと高く、室温~900℃の温度域にて導電率はほぼ変化しない(導電率の温度係数が金属よりも小さい).フェルミ準位近傍で半金属的かつ平坦な状態密度により生じる小さな有効質量(m* = 0.10 me) と,Niのドーピングと価数変化より誘起される高いキャリア濃度(n = 2.2×1022 cm?3)が,高い導電率の起源となる.さらにLaCo0.5Ni0.5O3は,室温~900℃の実用温度域においても酸素放出等の組成変化は認められず,高い安定性を示す.以上より,LaCo0.5Ni0.5O3は“電気特性”と“高温安定性”の両面から,金属電極及び配線を代替可能な導電性酸化物として相応しい材料である.

著者Hisashi Kozuka, Kazushige Ohbayashi and Kunihito Koumoto
本誌リンクhttp://doi.org/10.1088/1468-6996/16/2/026001
引用 Sci. Technol. Adv. Mater.16(2015)026001.
2015.03.12掲載REVIEW ARTICLEPublished : 2015.03.10 / DOI : 10.1088/1468-6996/16/2/026001注目の論文一覧はこちら